日本の沿岸表層水および堆積物におけるマイクロプラスチック汚染の統合的評価
Tara-JAMBIO マイクロプラスチック共同調査は、タラ オセアン財団の日本支部であるタラ オセアン ジャパンとJAMBIOによる共同プロジェクトです。
タラ オセアンは世界中の海でプランクトンやサンゴ礁の海洋生物多様性を理解するための研究や、地球温暖化やマイクロプラスチックをはじめとするさまざまな環境的脅威が海洋に与える影響の研究を「科学探査船 タラ号」によって進めてきました。
タラ オセアン ジャパンは2016年に一般社団法人として設立され、このTara-JAMBIO マイクロプラスチック共同調査は日本で初めてのローカルプロジェクトです。日本各地の沿岸域におけるマイクロプラスチック汚染の現状を明らかにすることを目的としています。このような大規模な調査は、JAMBIOネットワークの活用によって初めて可能となりました。
本プロジェクトは科学研究にとどまらず、大人から子どもまでを対象としたアウトリーチ活動も実施し、海洋の重要性や、マイクロプラスチック汚染・気候変動といった脅威への理解を深めることを目指しています。これまでに延べ11,930人が参加し、ビーチでのマイクロプラスチック採取体験から、映画『マイクロプラスチック・ストーリー』の上映会まで、さまざまな活動が行われました。
また、タラ号での探査プロジェクトと同様に、東京藝術大学の協力のもとアーティストも調査に同行し、その後、香川県三豊市にある粟島および東京藝術大学でプロジェクトをもとに制作された作品を発表しました。
調査結果は米国化学会誌「Environmental Science and Technology」誌(2025年発表、https://doi/10.1021/acs.est.5c02645)に掲載されました。
2020年10月から2023年6月にかけて、北海道から沖縄まで計15か所の臨海実験所で実施された調査により、表層水および堆積物を対象とした合計110サンプル(53,557粒のマイクロプラスチック)を取得しました。そのうち11,699粒については、フーリエ変換赤外分光法(µFT-IR)による化学分析が行われました。
表層水の平均マイクロプラスチック濃度は288.7 ± 651.6 g/km²、堆積物は1,185 ± 3,829 kg/km²でした。降水量、人口、養殖、漁業といった環境・社会経済的要因が、沿岸部へのマイクロプラスチック流入の主要因であることが示されました。また、漁業や養殖活動などの海上活動も無視できない発生源であり、これらの分野から発生する大型プラスチックごみの破片化や劣化が、マイクロプラスチック汚染のリスクを高めています。

表層水の結果:マイクロプラスチック濃度と場所毎のマイクロプラスチックのポリマーの割合

堆積物の結果:マイクロプラスチック濃度と場所毎のマイクロプラスチックのポリマーの割合
ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)などのポリマーが、表層水および堆積物の両方から多く検出されました。これらは包装材や使い捨て製品として世界的に最も多く生産されているため、使用と環境への流出が直接的に結びついていることを裏付けています。
しかし、マイクロプラスチックの発生源や輸送経路、それらが分布・移動・定着にどのように影響するのかについては、さらなる研究が必要です。
今後は、陸上および海上活動の双方において、教育・法整備・廃棄物管理システムの強化を進め、海洋へのさらなる流出を防ぐことが急務とされています。
日本発のローカル科学プロジェクト | Tara JAMBIO マイクロプラスチック共同調査
https://jp.fondationtaraocean.org/news-expedition/microplastic-survey-paper/
Latest research to clarify the reality of microplastic pollution along the coast of Japan | Press release of Tara Ocean Japan
